火星を人類が住みやすい様にする「テラフォーミング」について

 火星や月などを私達が住みやすい場所にすることを「テラフォーミング」と言います

地球以外の天体である火星や月などを、私たち人類が住みやすい場所にすることを「テラフォーミング」と言い、ここ数年のあいだ注目されている言葉となっています。


地球火星月の大きさ比較
地球とテラフォーミング対象の火星と月の大きさ比較 資料作成:著者


子ども達にも分かるように噛み砕くと、言ってみれば荒れ果てた大地を開拓するようなものです。その宇宙バージョンだと考えれば良いと思います。

世界の宇宙分野に関わる科学者やエンジニアなどの皆さんのほとんどは、将来人類は月や火星に進出し生活するようになると思っています。天文学者でも、そうだと思います。
但し、それは数十年後か数百年後かなど、いつまでに実現するかは意見の分かれるところだと思います。


写真提供:NASA


科学者などでない世間の一般の方々でも、少なからず宇宙に関心のある方は基本的にはそう考えている方々が大半であることは間違いないでしょう。

                 写真提供:NASA


但し、最近科学者の皆さんが言っている「テラフォーミング」とは、火星の環境自体を地球と同じような環境に変えることが出来ないかと言うことです。
その為の研究なども既に進められています。


なぜ人類は、地球外を目指すのでしょう

様々な理由はあると思いますが、
私たちが生活している地球の事を考えても、見知らぬ宇宙空間を移動している現実があります。
地球の近くの宇宙や遠くの宇宙を知りたいと思うのは自然なことです。




ですから、探査機を飛ばしたり、時には人間の乗る宇宙船で直接調べに行ったり、あるいは天体望遠鏡などを使って遠い宇宙のことを調べるのです。

それ以外にも、資源不足や環境問題なども関わっていると思います。
私が子どもの頃は、世界の人口は30億人と暗記したものです。たった数十年で約79億人(2021年現在)です。
近い将来に100億人を超えると言われています。

現在の先進国諸国の皆さんは一家で車数台やテレビやエアコンなどの家電も数台持っている家は一般的です。もし、発展途上国の皆さんが同様な生活を進めたら、今でも資源不足となると言われています。

ですので、火星や月また小惑星などの他の天体に資源がないか今から調べることも普通の考えだと思います。


宇宙船が小惑星に衝突し小惑星の軌道を変える 写真提供:NASA

また私たち人類は、地球に私たちより長い間生活していた恐竜が宇宙から飛んできた小惑星の衝突で滅亡してしまった事も知っています。

ですから、良い天体望遠鏡をつくり小惑星など他の天体の観測を行っています。もし危険な天体が有ったら宇宙船などを使い軌道修正し地球への衝突を防ごうとします。


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アルマ電波望遠鏡 写真:著者


もし、他の天体の地球への衝突を防げなかった場合でも、人類の活動範囲を宇宙まで広げて火星や月に住んでいれば人類滅亡とはならないと考えるのも自然なことです。


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月面基地 写真提供:NASA


そんなことばかりではなく、知らない事を知りたいと思ったり、魅力ある新しい宇宙について知りたいと思うのも、これまた自然なことです。


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月面着陸から火星を目指すアルテミス計画 写真提供:NASA


それから、ロシアのロケット研究者であり「宇宙旅行の父」と言われているコンスタンチン・ツィオルコフスキーの「地球は人類のゆりかごである。しかし人類はゆりかごにいつまでも留まっていないだろう」と言う名言もあります。


第2の地球候補は、なぜ火星なのか?

金星と火星は、どちらも地球のお隣さん。金星が地球より太陽側の内側を回り、火星は地球より外側を回っています。



地球との距離も火星より金星が近く、大きさも地球と金星はほとんど同じ。なら何故、第2地球候補として火星を選んだのでしょうか。

金星は人類が行けるような星ではないのです。地表の温度は500℃近い、これでは無理でしょう。
金星表面の気圧は90気圧、立っていられません。押しつぶされてしまいます。
こんな厳しい環境では、第2地球候補にはあげられません。

しかし、火星のテラフォーミングの次のターゲットは金星の可能性は高いと思います。


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探査機ガリレオの撮影した金星 写真提供:NASA


火星が第2地球候補となったのは、一番に北極と南極に水の氷があること、さらに欧州探査機「マーズ・エクスプレス」の超音波測定によって、火星の南極地下1.5㎞に水、更に湖らしきものを発見!地球南極のボストーク湖の様な湖は幅20㎞で深さは1ⅿ以上、水温は-10度~-数十度、凍ってないのは塩分濃度が高いため。


火星北極冠の季節変化22
小中高生向け講演会資料 資料作成:著者


火星は地球より太陽から離れている、そして大気が地球の1%程度などから、地球に比べて寒暖差が大変に激しい環境です。でも平均気温が-40℃とか-50℃の世界で南極の内陸部くらいの温度です。

なので火星は、金星の大変な環境と比べると、地球から目指し移住目的の惑星としては格段に良い環境であると言える。

火星 写真提供:ESO


更に、地球は地軸が23度傾いているので春夏秋冬の季節がある、火星も25度傾いているので季節がある。また火星の一日は24時間40分。それから火星の1年は地球の約2年なので動画の通り太陽系の8つの惑星では地球と火星が似ており、移住した時の居心地が良いのではないかと想像される。


nasaの8惑星軸傾斜と自転速度の比較
太陽系8惑星の地軸の傾きと自転速度の比較 動画提供:Dr. James O'Donoghue


「テラフォーミング」の具体的な方法

今から3年ほど前のNASAの見解では、現時点の技術では火星のテラフォーミングは難しいと言っていました。
新しい研究・開発などが無い限り厳しい事は確かです。

でも地球以外に人類が居住できる場所をつくる「テラフォーミング」と言う言葉には魅力があるのか、世界中で多くの科学者が、テラフォーミングを可能にすべき材料開発や技術研究にしのぎを削っています。そして可能性のありそうな新しい技術が誕生しつつあります。

テラフォーミングの具体的な方法としては、二酸化炭素の大気を呼吸できる空気にする、薄い大気を濃くする、そして表面温度を上げることです。



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4段階で描いた火星のテラフォーミングの想像図 資料提供:MarsTransitionV.jpg


シアノバクテリアのことをご存知でしょうか?地球史において重要な役割を果たした微生物、光合成で地球に初めて酸素をもたらしたと言われています。
地球の氷河期にも絶えなかった、更に光が届かないような湖の底でも光合成を行う。



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シアノバクテリア 写真提供:ja:User:NEON


このような環境下でも生き続けることのできるシアノバクテリアは、火星にも生存するのではないかと火星探査車の調査に期待されていたが、現時点まで発見されていません。

テラフォーミングの具体的な方法としての最初は、今一番注目されているのが、世界の科学者の皆さんが提案している「地球のシアノバクテリアを人類が移住する前に、火星に送ろう。」と言う話しです。

SF映画のような話しですが、シアノバクテリアを火星に持っていくと、人類が呼吸するのに必要な空気をつくりだすのに役立つ可能性があるためです。

テラフォーミングの具体的な方法その2としては、
火星の北極と南極にある氷の山である極冠(アイスキャップ)に人工衛星に取付けた大型ミラーを使い極冠の氷に、集中的に太陽光を当ててとかす事により二酸化炭素や水蒸気が出て火星の気温が上がる。


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火星探査車キュリオシティ 写真提供:NASA


テラフォーミングの具体的な方法その3としては、
火星の表面に温室効果ガスであるメタン・フロンなどを直接まき散らす。


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国際宇宙ステーション 写真提供:NASA


これから科学技術や新しい材料などが開発されると、さらに有効なテラフォーミング方法がでてくることと思います。

但し、どのテラフォーミングの具体的な方法を進めるにしても、1か国や数か国で進めるのではなく、全人類合意のもとに進めて頂ければと思います。

どのテラフォーミングでも、相当額の費用と言うか莫大な費用が発生すると思われます。

以上の通り、テラフォーミングは火星全体を対象としますので、そう簡単ではありません。

火星探査については、当分の間は火星周回軌道に国際宇宙ステーションの様な基地をつくるか、火星の地上に火星基地をつくるとかして長期間調査を進めながら、併せて新しいテラフォーミング方法を研究するスタイルとなると思います。


写真提供:Space X




それから、火星や衛星フォボスとダイモスそして月などに及ぼす影響についても、更に宇宙に与える影響等についても、しっかりと調査・研究して進めていただきたい。


なぜ人類は宇宙を目指すのか‐1
火星有人探査のイメージ 写真提供:NASA


ポスト火星テラフォーミングを予想しましょう

テラフォーミングを実際に進めるにあたっては、莫大な費用と時代時代のトップ技術をつぎ込まなくてはならないので、数十年から数百年という長期のプロジェクトとなります。

もし火星のテラフォーミングを進めた場合、費用問題もあるとは思いますが、惑星ではなく衛星ですが月のテラフォーミングを一部併行して進める可能性もあります。

惑星のポスト火星テラフォーミングは、金星の可能性が高い。
なぜかと言うと地球に近いことと重力が地球とほとんど同じというメリットです。

テラフォーミングとは少し意味合いが違いますが、金星の浮遊都市というアイディアがあります。
金星の上空が地球の温度・気圧に似ているからです。

金星の浮遊都市 写真提供:NASA

金星の上空に浮遊都市を建設して、空中に住みながら木々や植物を繁殖させ、徐々にテラフォーミングを進めると言うことです。

この浮遊都市建設技術がしっかりしたものになると、地面を持たない木星や土星のガス惑星や氷惑星などでの浮遊都市建設も可能性が高くなります。


太陽系
太陽系 写真提供:NASA


数百年さきか数千年さきか分かりませんが、遠い未来に人類が太陽系全体に住み、行き来する時代がくることを夢見て想像の世界で楽しみましょう!

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