朝は笑顔で送り出す ― 宮大工の家に受け継がれた知恵
朝は笑顔で 私は、遠い昔から宮大工を生業としてきた職人の家に生まれました。 祖父母も父母も、朝はいつも自然な笑顔でした。 子どもの頃は、それが当たり前の家庭だと思っていましたが、大人になり、社会に出てから、その理由がよく分かりました。 父も母も職人の家で育ち、子どもの頃から「朝から人を怒らせてはいけない」と厳しく教えられてきたそうです。 宮大工は高い場所で仕事をすることも多く、危険な機械も扱います。もし気持ちが乱れたまま現場へ向かえば、集中力が欠け、大きな事故につながるかもしれません。 だから祖母や母は、家族を笑顔で送り出すことを何よりも大切にしていました。 さらに宮大工の仕事は、安全だけではありません。 現場では次々と工夫を重ね、新しいアイデアを出しながら建物を造り上げていきます。そのためにも、朝の気持ちが穏やかであることが大切だったのです。 母はよく言っていました。 「これは職人だけじゃない。会社員でも、どんな仕事でも同じ。子どもだって毎朝怒鳴られていたら、考える力が育たないよ。」 その言葉は、今でも私の心に残っています。 兄は大工となり、やがて棟梁になりました。 若い頃から「良い職人だ」と評判で、現場では次々と工夫やアイデアを生み出していました。 私も宮大工のDNAを受け継いだのでしょうか。 私はエンジニアの道へ進み、宇宙開発に携わるようになりました。 仕事では、新しいプロジェクトにつながる提案や、製造現場で発生する難しいトラブルの解決策を考えることが多くありました。 その積み重ねが評価され、「宇宙工場 初代アイディアマン大賞」をいただき、その後もアイデアに関する表彰を受け、多くの特許提案にもつながりました。 振り返ってみると、不思議なくらい良いアイデアは朝に生まれていました。 前日の夜まで何人ものエンジニアで頭を抱えていた難題が、翌朝の通勤中にふっと解決策として浮かぶ。 そんな経験は一度や二度ではありません。 もちろん、睡眠を十分に取れた朝ほど頭はよく働きます。 一方で、深夜まで仕事をした翌朝や、仲間との付き合いで睡眠不足の日でも、長年の習慣のおかげなのか、朝にはやはりアイデアが浮かびやすいと感じていました。 これは仕事だけではありません。 現在取り組んでいる講演、テレビ・ラジオ出演の原稿づくりでも、最初のひらめきは朝の静かな時間に生まれることがほ...