有害な太陽風、でも太陽風は私たちを守ってくれている!ウィズ太陽風対策

 太陽風って何?どこまで飛んで行くの?

太陽圏の端近くを飛行中にボイジャー1号が撮影した白丸の中の地球 写真提供:NASA


太陽表面の部分的な爆発である太陽フレア、これによって私たちにとって有害な高温の電気のツブの集まりである太陽風が地球や太陽系の惑星に飛んできます。

太陽フレアが多く発生する太陽の活発な活動時期は、11年に一度という周期を繰り返しています。

太陽から出た太陽風は水星・金星・地球・火星・木星・土星・天王星・海王星の8個の太陽系全ての惑星を越えて、さらに180億km彼方まで届いているのです。

その太陽風の届く範囲のことを「太陽圏」と言います。太陽圏は太陽系より狭い範囲です。

飛行中のボイジャー1号 写真提供:NASA



この太陽風の届く外れまで行くのに、時速6万kmの高速で35年もかかっています。今まで人類の探査機では、ボイジャー1号とボイジャー2号が通過しています。

ボイジャー1号・ボイジャー2号ともに、打ち上げから45年ほど経っています。出会うかもしれない太陽圏外の知的生命体へのプレゼントを持って果てしない長い宇宙の旅を続けています。

ゴールデンレコードと言うメッセージを持って航海中のボイジャー1号 写真提供:NASA


私たちを太陽風から守っているのは地球の磁石

有害な太陽風から、私たちを守ってくれるのは地球の磁石、なぜ? 

太陽風は磁石に近づくと片方の電極に吸い寄せられると言う性質があるからです!

著者制作の宇宙講演会用の資料


地球の磁石がバリアとなり地球の中には入れない。その太陽風の一部のツブは地球の磁石にそって北極や南極上空から入り、そして空気とぶつかり、美しいオーロラとなります。

その空気のツブの成分によって色が変わる。高い所は酸素が多いので赤色、そして緑色のオーロラ。低い所は、チッ素が多くなり、紫色やピンクとなります。

著者制作の宇宙講演会用の資料


ですので、一般的には強い太陽フレアが発生すると危険だと思うのですが、オーロラファンは喜んでいます。

それ以外にも喜ぶ人たちがいます。私も、その仲間でした(^^♪、アマチュア無線家です。小さな10ワットくらいの無線機でも世界中とコンタクトできるようになるからです。日本から遠い欧州や南米などとも小さな無線機で話すことができました。

そうは言っても、太陽風による甚大な被害のことを知ると、オーロラファンもアマチュア無線家も強い太陽フレアが発生したと喜んではいられないです。

私も太陽風による被害が、こんなに大きいとは知りませんでした。私は若い頃、11年に一度の太陽活動が活発になるのを楽しみにしていたアマチュア無線家でした。今は大変に反省しています。


2025年は100年に一度の活発な太陽活動だと予想されている

次の太陽の活発な活動時期、言ってみれば太陽活動のピークは2025年です。

また、今までの調査などから2025年の太陽活動のピークは100年に一度と言う、過去最大級の活発な太陽活動だと、米NASAや世界の科学者は予想しています。

11年周期の太陽活動 写真提供:NASA


もしそうであれば最悪2週間、断続的にスマホやテレビ、更に船や飛行機の利用ができない。またカーナビが誤動作、さらに停電や人工衛星の故障なども予想されます。


太陽風で、どんな被害がでるの?

地球は周りの地球磁石がバリアとなって守ってくれますが、人工衛星や探査機はバリアが無いので故障することがあります。故障例としては、探査機と地球の交信をジャマしたり、探査機のコンピュータや搭載機器を壊してしまいます。

小惑星探査機「はやぶさ」 写真提供:JAXA/池下章裕


有名な小惑星探査機「はやぶさ」では、イオンエンジン・コンピュータ・通信系などは最小限の被害に収まったが、太陽電池パネルが傷つき、電気を作る能力が下がった。その為、目的地の小惑星イトカワ到着が予定より3ヶ月遅れました。

また宇宙船や宇宙ステーションに滞在している宇宙飛行士もバリアとなる厚い壁のある部屋に避難します。

国際宇宙ステーション 写真提供:NASA


大きな太陽フレアが発生して太陽嵐となると、地球内の変電所も破壊されることもあります。

地球以外では有害とまで言えませんが、探査の邪魔となることです。

例えば、太陽風や放射線によって、小惑星などの表面の見た目が変わります。このことを宇宙風化と言います。

著者制作の宇宙講演会用の資料


小惑星探査機「はやぶさ」や「はやぶさ2」では、宇宙風化のない物質を持ち帰ろうと苦労しました。

特に「はやぶさ2」では、弾丸で人工的にクレーターをつくり、太陽風などを浴びてない新鮮な砂や石のサンプルを持ち帰ることに成功しました。

著者制作の宇宙講演会用の資料


ですので、小惑星探査機「はやぶさ」と「はやぶさ2」の成果は、地球の水や生命そして地球や太陽系の起源解明につながる快挙と言われています。


太陽風は怖い反面、もっと怖い系外宇宙線から私たちを守っている!

太陽風が届く太陽圏の端で、太陽風と太陽系外の宇宙線とが交わる場所、つまり境のことをヘリオポーズと言います。

ボイジャー1号は35年かけてヘリオポーズに到着。

35年でヘリオポーズに到着したボイジャー1号 写真提供:NASA


このヘリオポーズを通過したボイジャー1号とボイジャー2号からの詳細なデータによって、ヘリオポーズは予想以上の高熱で太陽系外からの宇宙線が入ってくるのを防いでいることなどがわかりました。

太陽風は地球の周りにも来て、人工衛星や探査機などの故障原因ともなりますが、私たち人類にとって、もっともっと怖く有害な宇宙線が8つの惑星に近づくのを防いでいてくれているのです。

つまり大変に有害で危険な太陽系外からの宇宙線が私たちの方向に侵入しないように、太陽風はバリアとなってくれているのです。


太陽風への対策を進めよう!

太陽風は私たちを守ってくれていることは分かりましたが、有害であることも確かなんですね。

「With太陽風」と言う考え方が必要だと思います。

太陽フレア 写真提供:NASA


太陽観測衛星で太陽フレア観測を常に行ったり、また米国や欧州そして日本などの黒点の増減やフレアデータを基に宇宙天気予報士が太陽風や宇宙線などの宇宙天気の様子を予報することも必要です。

今でも大学や高等専門学校などでも人工衛星を打ち上げています。これから益々安価で高性能な小型人工衛星が開発されていますので、地域の団体や小さな会社でも人工衛星を打ち上げるようになります。ですから、太陽風などの状況把握は重要となります。

さらに2030年代になると、地球近郊宇宙や月面を目指す会社や研究機関が増え、2040年には月に1000人が住み1万人が行き来する時代となると言われていますので、宇宙天気は一般の皆さんにも重要となります。

月面探査 写真提供:NASA


日本の総務省も対策として、インフラ整備や宇宙天気予報士の創設を提言しています。

今後、打ち上げる人工衛星や探査機などについては、現在のものより太陽風対策を強化したものでないと打ち上げられないと言うような国際的な宇宙規則を制定することも必要かと思います。価格も上がるとは思いますが、この辺の事業に宇宙ベンチャーが入り込めるのではないかなと思っています。

現在の地上の変電所についても、地震対策や津波対策などと同じように太陽風対策を実施して、強い太陽風が地上に来た場合、少しでも被害を少なくできるような対策を考える必要があります。

オーロラ 写真提供:NASA


その他にも、重要なコンピューターや電子機器類の施設なども徐々に太陽風の影響を受けにくい建物や場所に移すとか、または夫々の機器に個別対策するようにする。

お金がかかることではありますが、世界の科学者やエンジニアも、早急に本腰を入れて研究をスタートする必要もあります。

宇宙船「クルードラゴン」 写真提供:NASA


またスタートは過去最大級と言われる「百年に一度の規模の太陽フレア」をターゲットにする。

将来的には、過去最大級「百年に一度の規模の太陽フレア」の百倍以上のエネルギーを発生させる「数千年に一度のスーパーフレア」をターゲットにするようにすれば完璧ですね。

当然遠い将来は、月面や火星の建物やローバーなども場所に合わせた対策を行って投入したり建設する必要があります。

今後の宇宙事業は「With太陽風」となることでしょう。

国際宇宙ステーションからの地球 写真提供:NASA


今回の投稿「有害な太陽風、でも太陽風は私たちを守ってくれている!ウィズ太陽風対策」は、どうだったでしょうか?

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次回の投稿もお楽しみに!

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