世界で輝け!日本のH3ロケット

 H3ロケットの前に、世界のロケット打ち上げ状況について

まず、H3ロケットの話に入る前に、世界のロケット打ち上げ状況をお話します。

現在、人工衛星を自国の技術で打ち上げたのは、旧ソ連、アメリカ、フランス、日本、と日本は、「 日本の宇宙開発 ・ロケット開発の父 」と言われている糸川英夫さんらの頑張りにより、世界で4番目に打ち上げ成功しました。その後は中国、イギリス、インド、イスラエル、イラン長い間、この9ヶ国でしたが、2012年に北朝鮮が打ち上げ成功!その10年後の一昨年2022年に韓国が打ち上げ成功しました。

と言うことで、今紹介した11ヶ国が自前のロケット打ち上げ技術を持っていることになります。世界には200ヶ国弱の国があるのですが、約5%のこの打ち上げ成功グループに入りたくて、アメリカやロシアそれから日本などを目指そうと世界各国が頑張っているのです。

ファルコン9ロケット (写真提供:SpaceX)



さらにアメリカでは国家機関のNASAではなく、イーロンマスクさん率いるスペースX社とか、アマゾン創設者のジェフペゾスさんの率いるブルーオリジン社なんかの民間会社がロケットを打ち上げている。
日本でも、たくさんの民間会社がロケット打ち上げ事業に参入しています。中でも多くの方々が知っているホリエモンロケットで有名な、北海道の大樹町の宇宙ベンチャーである
インターステラテクノロジズも2019年5月にモモ3号で、日本の民間会社のロケットとして初めて打ち上げ成功しています。

MOMOロケット (写真提供:インターステラテクノロジズ)



それから、最新情報としては、来月3月9日㈯午前11時に和歌山県串本町と那智勝浦町にある民間ロケット射場「スペースポート紀伊」からカイロス・ロケット初号機が打ち上げられます。
当日土曜日ですので、休みの方もいると思いますので、ユーチューブやニコニコ動画などでもライブ配信しますので、みなさん応援してください。


日本の主力ロケットH3の2号機打ち上げは大成功!

ここから、本題のH3ロケットですが、昨年3月にH3初号機を打ち上げました。
メインエンジンの第一弾ロケットとサイドについている補助ロケットは問題なく、宇宙空間に飛び出し。
軌道投入用の二段目ロケットが、この二段目ロケットはH-ⅡA用ロケットと同じタイプのものですが、着火せず失敗となってしまいました。

H3ロケットの早期成功を目指すために、二段目ロケットに着火できなかった原因を詳細に調査し原因究明を行っていると、過去の経験などから、普通で1年から数年かかってしまいます。
そんな時間はないので、2号機の打ち上げを早める為に可能性のある3件について全て対応処置をして、今回2号機の打ち上げに臨みました。

H3ロケット2号機の打ち上げ (写真提供:JAXA)



その結果、2月17日に種子島宇宙センターから打ち上げられ、初号機と同様に第一弾ロケットと補助ロケットは問題なく動作し、宇宙空間での、前回不具合となった二段目ロケットへの着火も問題無く進み、人工衛星の軌道投入も大変にきれいに投入され、H3ロケット2号機の打ち上げは大成功となりました。

種子島宇宙センターからのH3ロケット2号機の打ち上げ (写真提供:JAXA)



この不具合に対する対応方法、つまり原因究明に、こだわらず少しでも早く、打ち上げ成功を目指した対応方法は良かったと思います。


H-ⅡAロケットがあるのに、なぜH3ロケットを開発したのか?

ここで皆さん疑問に思われることは、日本の主力ロケットH-ⅡAとH-ⅡBを合わせると打ち上げ成功率98%以上と言う世界トップクラスの、とんでもなく安定した技術で評判のロケットがあるにも関わらず、なぜ、新しいロケットであるH3の開発に入ったのでしょうか?

H3ロケット2号機の第一弾ロケット (写真提供:JAXA)



色々なことが影響していることですが、一番大きなことは新しいロケットを再開発して、世界と勝負できるような打ち上げ価格と安定した打ち上げを実現するためです。
前のH-ⅡAロケットは安定した打ち上げ成功率は実現しましたが、価格面で世界から受注できなかった。
ですから、ロケット打ち上げ価格を下げて、世界のロケット打ち上げ競争に入り込むためです。
今までH-ⅡAは約20年間の打ち上げで、海外の衛星を打ち上げたのは5~6回だったと思います。
なぜ少なかったかと言うと打ち上げ価格が100億円と高かったのです。

H-ⅡからH-ⅡAにした時も、関係するエンジニアが頑張って打ち上げ費用を下げたのですが、価格的に受注できなかった。

H-ⅡAロケットからH3ロケット、どのようにして価格ダウンを目指したか

それでは、H-ⅡAロケットからH3ロケットは、どのように変えようとしたのか?
打ち上げ能力を1.3倍ですから3割増しにして、どのような手段で打ち上げ価格を100億円の半分の50億円を目指したのか?

H3ロケット2号機の打ち上げ時の管制室 (写真提供:JAXA)



大きなエンジン、メインエンジンの推力、つまりパワーを1.7倍にして部品数を少なくする。
つまり、打ち上げ価格を安く、しかも安全性と柔軟性を高いレベルで実現するために、H-ⅡAロケットのLE-7Aとは全く違うタイプのLE-9と言う新しいエンジンを開発しました。

それから、さらに打ち上げ値段を下げるために、今まで宇宙用として専用に作られていた部品類を自動車部品などを使い値段を下げ。また3Dプリンターを使っての部品作りで値下げ。

さらにロケットの心臓部と言われているメインエンジンの燃費をわずかですが悪くして、つまりシンプルにすることによって部品数を1/3に減らし、安定した打ち上げと価格を下げることに成功。
そして、作業の自動化などでエンジニアの工数へらしなどなど、価格低下を実現しました。


今後の世界の宇宙開発の動向

続いては、今後の世界の宇宙開発についてお話します。
最初にお話したように、自前でロケット打ち上げを出来る国は10ヶ国程度です。
さらに、その中でも他の国の打ち上げを、になえる様な技術力と価格に対応できる国は
半数程度でしょう。

その少ない国々で世界中のロケット打ち上げ競争を展開することになります。
そして最近は特に世界の多くの国々、自国で打ち上げることの出来ない約190ヶ国が宇宙開発に関心をもっており、自国の産業や若者・子ども達の教育面からも人工衛星を打ち上げたいと望んでいます。
人工衛星を持ちたいと思っているのは国ばかりではありません。
あらゆる民間企業や大学そして、お天気や飛行機・船・農業・工業などの研究所や研究機関、インターネットなどの通信関係、テレビやラジオ・新聞・雑誌などのマスメディアなど。

ファルコン9ロケット打ち上げ (写真提供:SpaceX)



ですからロケット打ち上げ需要は今後、大変な勢いで増えると言われています。
実際、昨年度も大変に増えています、現在のトップランナーはアメリカで、中でも再利用ロケットを製作したイーロンマスクさんのスペースX社がダントツです。


日本の主力ロケットH3にもチャンスあり

でも、日本にもチャンスはあります。50億円の打ち上げ費用は魅力的です、再利用ロケットなしで、この値段は世界中が驚いています。

この値段だけでなく、さらに実績を重ね、H-ⅡAロケットのように安定した打ち上げを進めれば、十分に勝負できるというか、世界をリードできると思います。

H3ロケット2号機の最先端フェアリング (写真提供:JAXA)



さらに現時点でロシアがウクライナに攻め込んでおり、ロシアは人工衛星の打ち上げサービスを停止している。
また、欧米諸国はロシアへの制裁ということで当分の間、ロシアに人工衛星の打ち上げを依頼することはないでしょう。
それに加え、円安という状況が続きそうなので、H3ロケットにとってはスタートダッシュできる有利な環境が整っているのです。


H-ⅡAロケットは今年度中で打ち上げ終わり

日本の大型主力ロケットH-ⅡAは、先月の1月に48号機が成功しました。
それでは、H-ⅡAロケットはいつまで打ち上げを続けるのだろうと思いますか?
残り49号機と50号機の2つで、今年度中に打ち上げ終了予定です。
ですから、来年度2025年からはH3ロケットだけとなります。

H-ⅡAロケット47号機 (写真提供:JAXA)




日本のため、世界のために輝け!日本のH3ロケット

もう既に世界からH3ロケットへの問い合わせが、たくさん来ているそうです。

H3ロケットでの海外の商業衛星については、イギリスの衛星通信大手から1件受注しています。そしてインドの月探査機の打ち上げも予定されています。
今回の打ち上げ成功により、これから海外の受注も、一気に増えると予想されます。

H3ロケット2号機の打ち上げ (写真提供:JAXA)



国内の打ち上げについても、国内分だけで年約3回ペースの打ち上げが2033年まで予定されています。
現在の設備ですと、年に6回程度の打ち上げ可能です。

ロケットに打ち上げ失敗はあってはならない事ですが、H3ロケット初号機の打ち上げ失敗は
エンジニアの皆さんが技術的にも精神的にも進化し強くなったとJAXA関係者は言ってました。
特に若いエンジニアは、これから新しい技術に挑戦するわけですから、良い経験になったでしょう。

H3ロケットは、これから20年間は使われるでしょう。ですから、開発期間は10年ほどですから、これから10年後くらいには、H4ロケットと言われるか分かりませんが、新しいロケットの開発に入らなければなりません。
10年後となると、その頃は、当然再利用ロケットの時代でしょう。
また世界中どんな国からも、どこからも希望する場所から打ち上げることが出来る、飛行機から打ち上げとか、船から打ち上げなど色々なスタイルも誕生しているでしょう。

そう言った新しい技術も、現段階から研究し学んでいかなければならないと思います。
現段階においても、すでに日本独自でカリストと呼ばれる再使用可能な小型実験機の開発と飛行実験を繰り返し、研究を重ね再使用ロケットに取り組んでいます。

再使用実験機カリスト (資料提供:JAXA)



さらに国際協力として、フランスとドイツと新しいロケット開発を進めています。

そう言ったロケット開発をより早く進めるためにも、国内外からの打ち上げ依頼が多くなると良いですね。
今回打ち上げ成功したH3ロケット、それから先日の世界初の月面ピンポイント着陸を成功させた月着陸機スリムなどの成功で、日本の宇宙産業が、ますます元気になることを期待しています。

H3ロケット2号機の打ち上げ (写真提供:JAXA)



今回は「世界で輝け!日本のH3ロケット」でした。

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