子どもにも分かる「宇宙のはじまり」
小学生にも分かる「宇宙のはじまり」
今回は、「宇宙のはじまり」についてお話します。
2022年の3月に、子ども向け宇宙テレビ番組「子ども・宇宙・未来」と言う番組の特集「宇宙のはじまり」と言う30分番組を制作しました。その時のデータを元に、お話を進めます。
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子ども向け宇宙テレビ番組子ども・宇宙・未来の特集「宇宙のはじまり」 |
「宇宙のはじまり」と聞いた途端に「難しそう!」と思う方も多分いるでしょう。今日は、この難しそうな内容を、テレビ番組でも成功したので、小学生にも分かってもらえるよう、文書でチャレンジします。
ですから、ご家族みんなでお楽しみください!
今現在、宇宙はふくらんで大きくなっている事は知っていますか?
このことは、天文学者のエドウィン・ハッブルさんなどが発見しました。
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天文学者エドウィン・ハッブル |
エドウィンハッブルさんとは、ご存知の人もいると思いますが、あのハッブル宇宙望遠鏡の名前になった方です。
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ハッブル宇宙望遠鏡 (写真提供:NASA) |
ハッブルさんらが天体望遠鏡で遠くの星などを調べたところ、私たちの地球から遠くへ離れていました。
また、遠くの銀河ほど速度が早く離れていました。
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写真提供:NASA |
このハッブルさんらの観測によって、
「宇宙全体がふくらんで、大きくなっている」と言うことが分かったのです。
図のように今の宇宙があります。
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今の宇宙(著者作成資料) |
宇宙はふくらんで大きくなっていますので、将来の宇宙は矢印のようにふくらんでいきます。
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宇宙は大きくなる(著者作成資料) |
その先には、はい!この通り将来の宇宙となります。
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将来の宇宙(著者作成資料) |
次に、
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昔の宇宙(著者作成資料) |
更に、
もっともっと時間をさかのぼると、
この宇宙はもっともっと小さくなり、
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宇宙はもっと小さくなる(著者作成資料) |
そして、最終的には宇宙の最初は一点と言うか、小さなツブから始まったということが分かります。
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宇宙の最初は一点(著者作成資料) |
これが今現在分かっている、宇宙のはじまりの基本です。
では、宇宙のはじまりである点のようなツブから、どのようにして今のような宇宙になったのでしょうか?
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宇宙(写真提供:NASA) |
今、世界中の科学者のほとんどが支持している宇宙の誕生説であります「ビッグバン」について、お話します。
今から70年ほど前にロシア生まれで米で研究を続けていたジョージ・ガモフ物理学者が「火の玉宇宙」と言うアイディアを発表しました。
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ジョージ・ガモフ物理学者 |
でも当時は、火の玉から宇宙が生まれたなどと言う事は受け入れられずメディアなどから「ビッグバン」と言われからかわれていました。
ところが、ガモフさんは「ビッグバン」と言う言葉を大変気に入りおおいに使ったことから、宇宙のはじまりの言葉として「ビッグバン」が使われる様になりました。
まず、宇宙が誕生する前は、
何もありませんでした。
「無(む)」の状態だったのです。
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無の状態(著者作成資料) |
つまり、物も時間も空間も、何も無かったのです。
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物も時間も空間も無かった(著者作成資料) |
何も無いと言っても、宇宙の基になるようなツブがあったのです。
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何もないと言っても、小さなツブはあった(著者作成資料) |
それは顕微鏡でも見えないような小さなツブでした。
そんな小さな宇宙のツブが、現れたり消えたりするような「ゆらいだ状態」だったのです。
ですから、この事を
「無のゆらぎ」と言います。
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無のゆらぎ(著者作成資料) |
その「ゆらぎ」状態の一つのツブが何らかの原因で突然1秒もかからない短い間に猛スピードで大きくふくらんだのです。
この突然ふくらんだことを「インフレーション」といいます。
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インフレーション(著者作成資料) |
このインフレーションの終わりには、ふくらんでいる猛スピードを何らかの原因でおさえる減速、つまりブレーキをかけたような状態となったのです。
※この何らかの原因については現在分かっていません
ですから、ブレーキをかけられたので猛スピードでふくらもうとしたエネルギーが熱に変わり真っ赤な「火の玉」状態になり「ビッグバン」となったのです。
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ビッグバン(著者作成資料) |
ここで間違いやすいのは、ツブが現れたり消えたりする「ゆらぎ」状態から突然「ビッグバン」になったと思われている方が多いことです。
小さなツブ
そしてインフレーション
インフレーションになってから、ビッグバンと言うことです。
「ビッグバン」のあとは、光が前に進めないほどドロドロの無限とも言われている超高温・超高密度状態でした。
分かりやすい表現をするとビッグバンのあとは太陽の中と同じような状態だとイメージして下さい。
このビッグバンの時に、世の中の物の最小単位である素粒子が生まれています。
その後、宇宙は大きくふくらんで行くのです。
ふくらむと言うことは温度が下がると言うことですので、宇宙が大きくなると同時に徐々に温度が下がりました。
宇宙が生まれて38万年後には光が前に進めるようになりました。
どう言う事かと言うと、ビッグバンと同時に物の最小単位である素粒子は生まれたのですが、
超高温のために素粒子同士くっつく事が出来ないで、高速で飛び回っているだけでした。
それが温度が下がり、陽子や中性子そして電子がくっつき原子が生まれ、光が前に進めるようになったわけです。
チョッと小学生には難しいですね、
もう少しだけ噛み砕いて話すと、
温度が下がって、一番小さな物同士がくっつくことが出来るようになったために、元素と言うものが生まれたのです。
このことによって、光が邪魔されずに前に進めるようになりました。
宇宙が生まれて38万年後には光が前に進めるようになったわけですが、
これを「宇宙の晴れ上がり」と言います。
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宇宙の晴れ上がり(著者作成資料) |
この時の温度は太陽の表面温度6000度より低い3000度から4000度と言われています。
この「宇宙の晴れ上がり」の時期に放たれた光が、宇宙でもっとも古い光なんです。
この宇宙で一番古い光を、今・私たちは観測することができるのです。
どう言うことかというと、今の宇宙の大きさは、その一番古い光を放っていたころの宇宙の大きさと比較すると、風船を大きくふくらましたように、約1000倍も大きくなっているのです。
光にも周波数があって、光は大変に高い周波数なんです。
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宇宙から地球に届く電波の種類(著者作成資料) |
ところが、宇宙が1000倍も大きくなることによって、光の周波数がテレビの電波と同じような低い周波数になったのです。
そして今でも宇宙で一番古い光が、電波となって宇宙の全方向から地球に届くのです。
この電波のことを宇宙マイクロ波背景放射と言います。
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宇宙マイクロ波背景放射 |
宇宙マイクロ波背景放射なんて難しそうな名前が出てくると、混乱するかもしれませんので、宇宙で一番古い光と覚えてください。
しかも、多くの皆さんが見ているのです。
それは、むかしのアナログテレビを見たことのある方は、宇宙で一番古い光の電波を見たことになります。
放送が終わったときに「ザーザー」と言う音と一緒にノイズ映像がでました、そのノイズ映像には宇宙で一番古い光の電波が含まれているのです。
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アナログテレビのノイズ映像に含まれている宇宙で一番古い光(著者作成資料) |
そのあと宇宙は広がっていき、最初の星が光り輝くまで宇宙には光がありませんでした。
この最初の星が輝くまでの数億年間を「宇宙の暗黒時代」と言います。
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宇宙の暗黒時代(著者作成資料) |
それから宇宙は、ふくらみながら星や銀河が生まれ、138億年かけて宇宙はふくらみ続け、今の宇宙となったのです。
宇宙の暗黒時代が過ぎて宇宙で最初に生まれた星のことをファーストスターと言います。
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ファーストスター(著者作成資料) |
ファーストスターは、宇宙誕生初期に生まれたと言うことで1個ではありません、宇宙誕生から約2億年~3億年後に生まれたと予想されています。
さらに、太陽の10~100倍以上もある巨大な星だとも言われています。
宇宙で最初の星・ファーストスターを観測しようとしている望遠鏡はいろいろありまして、現在準備しているところです。
一つ目は、
宇宙から観測するジェームズウェブ宇宙望遠鏡:現在観測がスタートし多くの発見を続けているハッブル宇宙望遠鏡の後継機
地球の北半球から観測するTMT望遠鏡:日本が参加の国際プロジェクトで口径30mの次世代超大型望遠鏡
地球の南半球から観測予定の欧州超大型望遠鏡(E-ELT):2025年に観測スタート予定の口径39m超大型次世代型望遠鏡
ファーストスターが誕生し多くの星が生まれ、それらが重力によって集まり、最初の銀河が誕生しました。
最初の銀河をファーストギャラクシーと言います。
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ファーストギャラクシー(著者作成資料) |
そらから宇宙が1000倍に広がっても、銀河の中の星の間は広がったりはしません。銀河内の星同士がつながっている力である重力の方が強いからです。
ですから、図の通り銀河と銀河の間は広がりますが、それぞれの銀河の大きさは元のままです。
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宇宙の膨張 |
ジェームズウェブ宇宙望遠鏡は、現在運用観測に入っています。
ですので、早くファーストスターやファーストギャラクシーを探して欲しいですね。
世界の科学者やエンジニアの活躍にエールを送りましょう!
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