人類の宇宙開発を急加速させたイーロン・マスク

 世界の宇宙開発業界に、ヤング・アイアンマンの登場

1980年代から1990年代、

世界のほとんどの宇宙開発に携わるエンジニアや科学者は、世界の宇宙開発のまどろっこしいプロジェクトの数々に嫌気をさしていたところでした。

なぜかと言うと、この頃に現役の関係者として活躍していた皆さんは、ほとんどが「地球は青かった」のユーリー・ガガーリン宇宙飛行士や「私はカゴメ」のワレンチナ・テレシコワ宇宙飛行士、さらに「これは小さな一歩だが、人類にとっては偉大な一歩である」のニール・アームストロング船長などアポロ計画の宇宙飛行士の皆さんの、なんらかの影響を受け、宇宙関係の仕事を目指した人達ばかりです。私も、そんな中の一人でした。

ですから、夢にまで見た月面開発や小惑星・火星などへの有人探査が思うように進まず、苛立っていました。前に積極的にチャレンジしなければ、新しいステージは生まれないと、私も一エンジニアとして、じれったい思いでいっぱいでした。

実際、1972年アポロ17号のユージン・サーナンとロナルド・エヴァンス、そしてハリソン・シュミットの三宇宙飛行士以来50年以上、月には行っていないと言うか、目指そうともしなかった。

確かに予算などの各国事情もあったかと思います、また税金の無駄づかいなどと騒ぐメディアとの闘いもあったでしょう。それにしても、一国ではなく現在進めているアルテミス計画のように数十ヶ国の連合体で進めるなどの工夫と努力を重ねれば突破口と言うか新しいステージは出てくるはずだと、結果として数十年も無策は無いだろうと、人類の有人探査に発言権さえ与えられない一エンジニアの私は怒り心頭でした。

さらに、有人探査の最先端プロジェクトであるスペースシャトルも事故など原因究明に時間が大変にかかり、開発が停滞気味で、世界中のエンジニアたちがまどろっこしさを感じている日々でした。

ところが、2000年代に入って、凄い若者が登場した。2002年にスペースX社を創設したイーロン・マスクです。

イーロン・マスク(写真提供:NASA)


南アフリカ生まれの男がアメリカに渡り、お金の無い中を会社を立ち上げた。安いオフィスを借りるとアパート代が払えずオフィスに寝泊まり、勿論シャワーや風呂もないのでYMCAのシャワーを浴びた。

そんな男が、インターネットサービスでタウンページやクレジットカードなどのアイディアで、お金を手にして、小さな宇宙関係会社であるスペースX社を立ち上げた。

この男、出来たばかりの小さな会社で、ロケット打ち上げに成功もしてないのに、巨大な会社を相手に堂々と自分の考えを述べていたのには、私は驚いた。

ロケット打ち上げに挑戦するも、何度となく失敗を繰り返している最中、将来構想を話し出すと止まらない。

なので、メディアからは格好の標的とされた。「インターネットで稼いだお金持ちの道楽」とか「宇宙開発は、そんなに簡単なものではない」などとマスメディアから笑いものにされた。

そんなビッグマウスの若者が、小型ロケットの打ち上げ成功から5年後にはアメリカ一の宇宙ベンチャーになり、15年後には巨大な会社をも抜き去り、世界一の宇宙開発会社になるなんて、誰が想像しただろうか?彼は人類の宇宙開発を数十年早め加速させたと言っても過言ではない。

クルードラゴン宇宙船(写真提供:NASA)


メディアから格好の標的とされ笑われた時に、私たちのように停滞している世界の宇宙開発に不満を感じていた現役のバリバリのエンジニアや科学者からは、しっかりした将来構想を持っており、失敗しても、どんどんと前向きにチャレンジしようとする姿勢は称賛されていました。石橋をたたきすぎる挑戦より、失敗したら修正し、あるいは改善して新たなステージに向かう姿勢は嬉しくさえ思えた。

クルードラゴンの有人初飛行ダグラス・ハーリー と ロバート・ベンケン(写真提供:NASA)


だから小型ロケット・ファルコン1の打ち上げ成功の時は、大変に嬉しかった。そして次々と進める超チャレンジングなプロジェクトに驚き感動しながら応援していました。

もし当時、もう少し若かったなら合否は別として、私もスペースX社の入社試験を受けていたでしょう。私たちと同時代のエンジニアの多くは、そのように思い、中にはリスクを伴う可能性と戦いながら米国に向かおうとした熱いエンジニアもいたと思います。

そして、もしイーロンマスクが登場しなかったら、再利用ロケットや巨大なスターシップ宇宙船、そしてスターリンクなどは、私たちシニアは味わえなかったかもしれない。私たちの子どもや孫の時代だったかもしれない。感謝しかありません。

スターシップ宇宙船(写真提供:NASA)


出来るなら、人類が単一惑星種から多惑星種になる瞬間というか、現在シニア世代の私たちも、せめても有人火星探査で火星に降りる宇宙飛行士の姿や人類の火星移住のスタートシーンをニュースでも良いから、見てみたいと思うのは贅沢な願いでしょうか。

イーロン・マスクが目指す火星移住(写真提供:SpaceX)

そんな事も、可能性として期待させてくれる、人類の宇宙開発を早め目、遠い先を目指すアイディアと実行力をともなったイーロンマスクです。

頑張れスペースX!頑張れイーロン・マスク!

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